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不動産鑑定徒然草 (2010/12/21 by 山口 隆)
                                                                                                                                                印刷用<click here>


バブルはなぜ起きたか - 新型発生のメカニズム -


バブルの原因究明は不可能に近いと考えられてきましたが、自然科学の進歩を取り込み、
従来タブーとされがちだった「人を生物として見る視点」で考えると本質的な姿が見えてきます。
本稿は近時有力となっている「アニマルスピリット」を重視した経済理論を起点に考察を進めたものです。


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<新型発生のメカニズム(近時)> 生物的視点から(私見)

  バブルの基底には、錯誤や思い込み、 「将来を予想しながら動く」 人間の 「群れ行動」等が存在する。
  その上、更に、「マニアのプログラム」が作動している可能性もある。
  欠乏の予想は強い群れ行動を誘発し、欠乏を増幅し、価格高騰と錬金術を生む。
  錬金術の登場も強い群れ行動を誘発する。
  実需と投機、双方の対象となっている商品では、両者は相互に関連している。
  強い群れ行動は上気(自信)・不安・マニア等で起き、背後には「将来が判らない」「将来へ命を繋ぐ」がある。
    その背後には「遺伝子のサバイバル」があり、これらの背後には自然の力「自己組織化・創発」がある。
  投機価格の変動を起こすのは、出来事自体ではなく、出来事に対する人間の集合的反応である。
  「チューリップ」でも、「後から思えば価値のなかった株」でも、「原野」でも ‥
    「不確実性」が高く、「将来値上がりする幻想」・「伝播して皆がやる」・「金」 があればバブルは起きる。
  ブームが起きている+価格が急騰している+急には追加供給できない商品=買うべからず!
  しかし、人は繰り返す ‥

  1. 錬金術のように見えるものが登場 → 「似ているが本当は異なるもの」に転移(連れ高)
      ← 人々は中身を見ずラベルに反応している(伝播→単純化→皆がやる→現実化)
      例1. 東京都心部の商業地の「地上げの限定価格」→ 「土地の価格」に転化
      例2. 米国のITバブル: インターネット・マイクロソフト.etc.が絶好調 → 「IT産業の株価」に転化
             米国の住宅バブル: 株の投機熱が住宅に転移し、高騰し出して、錬金術化した
      例3. 不動産証券化の「投資価値」 → 「不動産の価格・土地の価格」に転化 ← ミニで終わった
     (左辺は価値が上がって登場し価格が上がっているが、右辺は価値が上がっていないものを多く含む)
     (経済システムは複雑化したのに、反射的に出てくる人の反応は単純なまま)
     (一方において欠乏感が増幅し、他方において現実に錬金術が生まれている)
     (必ずしも合理的に動けない人間の行動が価値と価格の乖離を生んでいる‥上記以外の要因でも起こりうる)

  2. 基礎的な感情(欠乏不安・特別な餌の登場に対する反応等)による増幅のルーティンが入る
     (値上り期待が伝播→「上がるから買う.買うから上がる」が起きる→強い群れ行動となる)
      ・ 早い者勝ち
      ・ 買いだめ・買い占め、待ち得・売り惜しみ
      ・ レバレッジ、地域的拡散
      ・ 転がし・山分け・利益確定売り.. etc. etc. あらゆる方法を考える

  3. 金がなだれ込む(金余り) <Critical Factor>
     (貯蓄過剰・適切な運用先の不足 →運用圧力 →無理な運用 →行き過ぎた投機) <金利低下>
     (直近20年間の例)
      ・ 経済国際化 →新興国の急成長と貿易黒字
      ・ 先進国のベビーブーマーの年金準備世代化
      ・ 新たな金融技術等の登場、それに対する過信
      ・ ITの急成長で、情報伝播・資金決済の高速化、投機の大衆化が一層進んだ

  4. 経験によるブレーキ(新しい脳)がかからない
      例1. 世代が変わっている
      例2. 差異が存在し経験が軽視される・正当化する理論が現われる(New Economy Myth, etc.
      例3. 過去の経験が裏目に出る場合もある(土地神話)(前回はインフレが起きた)
      例4. 序列を競うプログラムが増幅要因に加わる→ウチはXX億‥ウチなんかOO億‥ウチはXXX億!
      例5. 時代背景・熱狂・成功の連続等により、抑えようもない自信過剰状態が形成される

  5. マニア状態(時に集団的に発生する異常な熱中)が起きる
      ・ 欠乏感の増幅
      ・ 希少感、ステータス感の尖鋭化
      ・ 盲目状態の発生
      (通常でないレベルの事態に感応して、マニアのプログラムが作動している可能性がある)
      (一方において欠乏感がさらに増幅し、他方においてリスク感覚の麻痺が生まれている)
      (様々な局面で多幸感が発現する)

  6. 巨大バブルは、歴史的な超長期的課題を乗り越え、
      国中が自信にあふれている頃に起きている(日本:戦後復興、米国:東西冷戦)。

  7. しかし、長期的には‥
      それに見合う成長が伴わない
      利益が損なわれている者がいる
      物価全体の高騰ではなく特定資産の高騰
      影響が広範囲に及んでいる ..etc..etc..

  8. 大崩壊
      ブームの終焉
      長期的需給バランスによる調整
      不動産は少数の取引きが相場を形成、桁違いの数が担保となっている
      不良債権の急増、金融危機の発生
      悲観ムードが経済悪化に拍車をかける

      ・・・・・・・・・・・・

      人間は随所に「ねじれ」「増幅」「不感」等を持つ○○億年の歴史の缶詰である。

      危機感は危機克服の原動力、しかし、時に、危機を増幅することもある。
      将来の欠乏の予想は、買いだめを生み、欠乏を増幅する。
      将来、不況が来る予想は、財布(投資・消費)のひもを締め、不況を増幅する。

      あらためて感じるのは「人の性」、
      そして、「それに気付きながら行動できる環境づくり」の必要性である!



   続きを読む (click here) → 6.BOIDSとインフレ期待



       <目次>
       1. 「バブルはなぜ起きたか - 総括 -」
       2. 「バブルはなぜ起きたか - 群知能 -」
       3. 「バブルはなぜ起きたか - 投機熱の伝播 -」
       4. 「バブルはなぜ起きたか - 投機.価格.価値の遺伝子 -」
       5. 「バブルはなぜ起きたか - 新型発生のメカニズム -」                 ← We are here!
       6. 「BOIDSとインフレ期待」
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